MDNO2


「……痛い」
懸命に顔を逸らしても、後頭部に見えない何かがちくちくと突き刺さってくる。
その何かとは、なのはの視線も含め、言外に籠めたフェイトへの不満なのだろうと推測出来る。
「……」
恐る恐る振り返ると、案の定こちらを鋭い瞳で睨み付けていたなのはと目が合った。
今はピンクの寝巻きに隠れてしまっている、フェイトが愛して止まない自身の胸を両腕で抑え付けながら。
「さっきシャワー浴びた時に見たら、赤くなってた。なんかヒリヒリするし」
「でも、なのはが良いって言ったから……」
「ここまでされるとは思ってなかったもん」
「ここまでって、そんな……」
頬を膨らませるなのはに言葉尻を濁しつつ、フェイトは昨夜の甘美な時間を脳裏に思い浮かべる。

細い腰に腕を回してきつく抱き寄せながら、柔らかな曲線を描く豊満な乳房を口に含めば、なのはが纏う香りが鼻腔を抜ける。
なのはらしく自己主張の弱い頂を呼吸も忘れ夢中になって吸っていると、徐々に意識が霞んでゆくのが分かった。くらりと脳が揺れる。
ああ、なんて幸せな眩暈なのだろうか。けれど、ここで倒れてしまうには余りにも惜しい。
仕切り直しとばかりに唇を離し、自分の唾液でべっとりと濡れたそれをシャツの袖で拭い、目線を上に向ける。
相変わらず女神のような淡い微笑を称えたなのはが、澄んだ瞳でフェイトを見下ろしていた。
随分と間抜けな顔を晒してしまったようだ。なんとなく気恥ずかしくなって視線を外し、薄茶色の蕾を頬張る。
ふと、同時に頭皮を優しく擽る感覚に気付いた。視界には入っていないので確認は出来ないけれど、どうやら髪を撫でられているようだ。
金色の髪の毛の間をなのはの指先が掻き分けて、それに伴い頭皮が軽く引っ張られていたのだ。
「……なのは」
「ん?」
「眠くなっちゃうから」
「別に寝てもいいのに」
再び唇を離したフェイトが咎めると、なのはは苦く笑ってそう言った。
「まだ眠りたくない」
「はいはい」
唇を尖らせるフェイトの頭の天辺にキスを一つだけ落とされる。
そんな余裕の態度が子供扱いされているように思えて、なんとなく気に入らない。
たった一人の人間にここまで夢中になっているのは、自分だけなのだろうか―。
雲の様に漂う思考をそのままに、フェイトはそろりと舌を伸ばして、目の前に在る乳頭を、縁に添って舐め上げた。
軽やかな水音を立てて円を描き、糸を引いた唾液を巻き込み唇で強く挟み込む。なのはが吐き出した息が、前髪を揺らし熱を分け与えた。
フェイトは気付かれぬようくすりと笑う。自惚れでも何でもない、答えはとうに出ていると。
「これは、さっきのお返し」
未だ鈍く痛む人差し指。先刻なのはに付けられた痕が見て取れる。
フェイトは、なのはの両の乳房を中心に寄せて噛み付いた。
「っ、フェイトちゃん、やめて」
突然の刺激に驚いたのか、なのはがフェイトの頭を抱え込む。
そんな抗議でやめる訳もなく、フェイトは何度もなのはの柔らかい肉に歯を立てた。
「いやだ、やめない」
「あはは、くすぐったい、くすぐったいから」
二人でぴったりとくっ付きながら笑い合い、ソファの上でじたばたと暴れる。確か、二時間くらいはそんな事を繰り返していたような気がする。
――いやはや、とても充実した夜だった。おっぱいだけであんなに楽しめるとは、なのはと出会って初めて知る出来事の一つだった。

「だからね、って……聞いてるの、フェイトちゃん」
「えっ?う、うん。聞いてるよ、勿論」
「フェイトちゃんはいつも限度ってものを知らないから」
「……なのはだって楽しんでたよ」
「……」
「う、ごめんなさい……」
「もういいけど」
「今日はね、大丈夫だから。ちゃんと痕が残らないように―」
「……今日って?」
「え?だって、なのは、まだ終わってないでしょ?」
「……だから?」
「え?え?だから、今日もおっぱいだけ……」
「駄目。フェイトちゃんに色々されて痛いだけじゃなくて、なんだか胸も張ってるし」
「ええええ…だってなのは、私、明日から長期任務で暫く帰って来られないんだよ」
「しらなーい」
「なのは……」
最近涙腺がどうにかなってしまっているらしい。
つれないなのはの態度に、昨夜と同じく目頭がじんわりと熱くなる。
「フェイトちゃん、ちょっとこっち来て」
「う、うん……」
そんなフェイトを見て、なのはは突然表情を引き締め、手招きをする。
あまりにも聞き分けのない事を言うものだから、叩かれちゃったりするのかな――フェイトは少し怯えながらも、身体をずらしてなのはのすぐ傍へ寄った。
腕を伸ばし頬を包み込まれ、思わず目を瞑る。次の瞬間、唇に柔らかい感触が降りてきた。
驚いて目を開けると、眼前にはなのはの顔があった。震える長い睫が、フェイトの肌を擽る。
キスをされているのだと認識するよりも先に、唇を割ってなのはの舌が進入してくる。
フェイトの舌の裏側に溜まっていた唾液を啜り、なのはは喉を鳴らしてそれを飲み込んだ。
「ふあ……」
一度唇を離して、至近距離で見詰め合う。温厚な光を瞳に灯して微笑むなのは。
情熱的なキスを仕掛けてくる時のなのはとは別人のようで、けれど同じ人間なのだという事をフェイトは知っている。
温もりを追いかけて、フェイトは羽根のように軽い口付けを数回なのはへと送った。
「フェイトちゃん」
「ん……?」
キスの合間に、なのはがくすくすと囁きを零す。
その囁きすらも食べてしまいたくて、フェイトは更に回数を重ねてゆく。
「私ね、フェイトちゃんとのキス、大好き」
「うん」
「フェイトちゃんは?」
「うん、好きだよ」
次の段階として、当然の如くフェイトはなのはの首筋へと顔を下ろすと、こらと額を叩かれた。
不思議に思って顔を上げると、また一つ唇にキスを落とされる。
「なのは?」
「柔らかくて、気持ち良くて、大好き。幸せな気分になれる」
「う、うん、ありがとう」
自分とのキスが好きだと言って貰えて光栄だけれど、早く次に進みたいと思うフェイト。
「だから、今日はずっとちゅーしていたい」
「ず、ずっと?え?ずっと?」
「そう、眠るまで。それだけでも満足出来る日だって、あるでしょ?」
ちゅ、と、音を立ててフェイトの唇を奪い、なのはは口角を上げてにこりと微笑む。
幼子のような無邪気な笑顔。その愛らしさに、脳味噌が激しく揺さ振られる。
なのはは時折、とても女の子らしい仕草や言動を見せる。特に恋愛事に関しては、乙女そのものと称しても過言ではない。
ただただなのはを求めてしまうフェイトと比べて、なのははひっそりと二人の愛を楽しむ傾向がある。
恐らくこの質問も、駆け引きの一つなのだろう。夜がキスだけで終わってしまうなんて、初めからフェイトの思考には入っていなかった。
だから、フェイトは思ったことを素直に口にしてしまったのだ。
「そんな、中学生じゃあるまいし」
「……」
「なのは?」
「中学生……」
甘い空間が凍る。ついでになのはの表情も見事に固まった。
あれ、何かまずい事を言っただろうか?もしかして、さっきのは冗談ではなかったりして、いや、そんなまさか。
血の気が引くというのは、正に今のフェイトの状況を示すのだろう。フェイトの顔がみるみる内に青褪めてゆく。
「な、なのは。うそ、嘘だよ。今のはふざけて言っただけだから」
「ふーん。フェイトちゃんは、私のことそんな風に思ってたんだ」
「違うよ!そうじゃなくて、キスは好きだけど」
「おっぱいの方がもっと好き?」
「そう、それだ!」
「………」
「あ、いや、その」
「フェイトちゃんの……」
「今のは言葉の綾で」
「バカーっ!」

ソファから転がり落ちる程のグーパンチは確かに痛かったけれど。
その後なのはが一言も口もきいてくれず、そのまま任務に出掛けなければならなかったという事実の方がもっと痛かった。


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